明日、君がいない (2006)

文字数 789文字

【そのガッツに震撼した】 2008/2/11



「19歳監督作品がカンヌを震撼させた・・」そうだ、
このセンセーションに乗ってみた。
過去に巨匠、偉才と称せられた映画人にも、みんなそれぞれ19歳のときはあった。
むやみに「19歳」を強調したがるマスコミの品性を疑いたくなる。
よくよく知れば、19歳のときには脚本をものにしただけであったらしい。
それよりも、その後独力で映像作家への知識・技術を習得した、
そのガッツに僕は震撼した。

ガッツ、その片鱗は本シネマの中に華開いている。
19歳の感性で語られるスト-リーはありきたりな表現だが瑞瑞しい、
酸っぱいほどの純粋さに満ちている。
何の文句がつけられようか!
現代の高校生の悩み、その核心にストレートに迫っている。
団塊世代の僕でも、この息苦しい、やり場のない怒り、
不安、熱情を突き放して観ることはできなかった。
といって、若者にお為倒しを言っているわけでは決してない、素直に共感した。

驚いたガッツの最たるものは、撮影方法だった。
論理では解き明かせない高校生一人ひとりの深暗感情をインタヴュー形式で暴いていく。
シネマの流れを止めてしまうのではという僕の思いは、最後杞憂に終わる。
自殺した友を、級友たちがなんとコメントしたか?!・・・たいした見せ場だった。

もうひとつ、カメラが主要登場人物複数にくっついて動く。
このスタイルは過去にもあった、
あるにはあったが全編徹底したシネマはかって知らない。

当然時間軸が、視線の方向が複数、人物の数だけ重複して交錯する。
なるほど、個人の人生は他人と関わってこのように動いているのかと、
小さな高校生活風景を覗くだけでも、なにやら人生のままならぬことが感じられる。
ここに、多面視点で大きなテーマに挑戦できる逸材の予感を感じ、
また僕は震撼した。

そんな希望がいっぱいのシネマ。
タルリ監督の次回作がとても気になる、早く逢いたいものだ。

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