愛の地獄 (1977)

文字数 595文字

【誰にもある地獄】1979/1/30



 
オリジナルタイトルは仏語で「怪物の剖検/それぞれの地獄」というらしいがヒット作「愛の嵐(1973)」を見習っての「愛の地獄」なんだろうな、きっと。
だが本シネマは「愛の嵐」の頽廃的エロチシズムとはかけ離れた、誘拐殺人サスペンスシネマ「愛の地獄」、その通りシネマはタイトルそのものだった。
誘拐、死体、身代金をキーワードとしたスピーディな展開の前半、謎が深まるばかりの中で「愛の地獄」の意味が大きくのしかかってくる。

誘拐され殺される娘の母親(アニー・ジラルド)の恐怖と哀しみを僕も共有する、「なぜ?」、「だれが?」と。
それはマスコミの傲慢なのか、それとも悪意のない大衆の悪意なのか? サスペンス内容と相まって「愛の地獄」も迷走する。

しかし、警部(ハーディ・クリューガー)が登場する後半解決編で「愛の地獄」が明確に形を帯びてくる。
愛を均等に与えることは難しいこと、愛することはその裏で傷つけること、人間の愛の法則に潜む矛盾、それはだれもが持っている「愛の地獄」だった。
後半の愛憎が前半のサスペンスを凌駕したとき、サスペンスを壊した演出を不愉快に思う一方で、今のTVドラマらしい決着に気づく、サスペンスも悲劇もあるお手軽TVドラマらしい決着に。
しからば、TVドラマ風に副題をつけてみよう: 
【愛の地獄・・少女誘拐事件に潜む親子の断絶】
(記:1977年1月30日)
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