フェイブルマンズ (2022)

文字数 720文字

【これで思い残すことはないでしょうね】 2023/3/6


「スーパー8(2011)」をスピルバーグの自伝ベースの作品だという思い違いをしていた。
また繰り返すのですか(?)という疑問を頭に張り付けたまま拝見した。

実のところは、本作は両親に捧げるというコメントが大きく映し出されるくらい、スピルバーグが映画に魅了される過程が1960年代の家庭環境のなかで緻密に描かれていた。
ちなみに、「スーパー8」はスピルバーグの王道エッセンスをエイブラムスが手堅くまとめた作品だと後から確認した、こちらは逆に徹底的フィクションの塊りである。

とはいえ、本作がどこまでスピルバーグ家の真実なのか見極めることはできないし、いったんシネマとして世に出た以上シネマとしての評価を下されることになる。
物語は主人公ユダヤ人一家の長男が5歳から18歳まで、映画に出逢い、映画に惹かれ、映画を作る喜びと才能に気づいていく中で、 父母、妹三人、祖母、という身内家族の歴史が主なコンテンツであるから、セレブの人生を覗く興味以外は主人公の手作り動画の高度な仕上がりに感嘆することしかなかった。

幼い主人公の作品(ウェスタン、戦争アクション、ドキュメンタリー)はシネマ製作の醍醐味を上手に伝え、主人公がそこにのめり込む姿が後のスピルバーグに重なってくる仕掛けになっている、まさに正真正銘の自伝シネマになっていた。
圧巻はジョン・フォード監督にアポなし面接するシーン、「地平線を真ん中に置くな」という名言と共に演じたデヴィッド・リンチの印象が強烈だった。

繰り返しになるが、76歳になってもまだ両親の離婚の顛末に説明をつけたかったスピルバーグ監督、これで思い残すことはないだろう。
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