リアル鬼ごっこ (2007)

文字数 716文字

【省コストもほどほどに】 2008/9/15



僕の大好きな「パラレルワールド」ネタ。
意表をつく国家プロジェクト「鬼ごっこ」にまず背負い投げをくらった。
SFジャンルにもかかわらず、主人公はじめとする主要メンバーが走る、走る、また走る。
主人公(石田君)はこの走りだけで、好感度を獲得している。
タイトルどおりの怪しい世界のストーリーに、肉体が駆け巡るギャップは一種のカタルシス。
パラレルネタ特有の、悩みながら考えながらストーリー展開を追っかけることも無い。
第一いつもおっかない鬼に追いかけられている主人公たちに同化しているわけだから、
そんな暇も無い。

SFシネマは細部に凝り始めると際限のない造りになるところ、
本作では省コスト方針が明らかである。それはそれで構わない。
その代わり、
ストーリー展開を観てくれといわんばかりに、アイデアが複層に仕掛けられている。

しかし省コストにも限度というものがあるだろう。
ロケパートの平坦さは前述の肉体系パーフォーマンスでカバーできたとしても、
セットパートでの美術、インテリア、衣装の貧困さは、
たとえば「悪の権化」に必須である重厚さを欠き、
劇中の台詞で悪をして「ダサいオヤジ」と自嘲させているが、
僕は笑うことはできなかった。

若い俳優中心だからといって、細部に手抜きをすると優れた素材でも輝くことはできない。
想定したくはないが、観客ターゲットをも同じく若年層にしての手抜きであれば、
シネマは将来の希望を自ら摘み取っているようなものだ。

近年、似たような方針の邦画が多いような気がする。
今は間引きをしてでも、才能と資金を充分につぎ込んだシネマに絞り込むときかもしれない。
多数のいいシネマに逢えるのに越したことはないが。
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