愛しのアイリーン (2018) 

文字数 466文字

【岩男の愛を止めるな 】 2018/9/18



決して無視できない吉田恵輔監督作品、
本作も決してぼんやりと見終わってはいけなかった。
まず、人間の嫌なところをさらけ出す姿勢は本作でもゆるぎなく、
シネマとともにどんどん僕は陰鬱になる。

今作のテーマは、嫁が来ない小心者・岩男が淡き恋に敗れて、
破れかぶれでのフィリピン娘との結婚譚。
どれほどその行為が無恥で社会常識から逸脱しているかは、
故郷に戻ったところで田舎社会が無慈悲にも教えてくれる。

「金で買った愛(結婚)」だけど岩男はそこからフィリピン娘アイリーンに愛を捧げる、
何やらほほえましい展開かと思いきや・・・。
吉田恵輔シネマの本領はここからだった。
母の異常な岩男愛とアイリーンへの嫌悪に抵抗し、アイリーンを守る岩男。
その悪意が周りの人たちを巻き込んでいく、嫌悪から愛は生じない。
ひとつのカタストロフィーから岩男の愛も崩壊していくかに見える。
ここから、シネマは岩男のアイリーンへの愛の深さを、
岩男の弱さ・醜さで残酷に証明していく。
哀しみと弱さから人間を紡ぐシネマ、やはり吉田監督独壇場だった。

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