ダンケルク (2017) 

文字数 650文字

【神話になったダンケルク】 2017/9/9



炎に包まれたスピットファイアーがこれほどの崇高に見えるとは。
このシークエンスはみじめな敗退作戦のなかで
ジョンブルの意地を見せた貴重なエピソードとして描かれる。
まるでこの撤退作戦こそが英国の底力を喚起するものであるかのように。
今まさにヨーロッパ連合を脱し
独自の道を歩むことを選択した英国を象徴しているようだった。

ノーラン監督の映像づくりがすごい。
前述のスピットファイアー小隊の空中戦は英国側操縦席からの目線と、
大空でのバトルいうオーソドックスな作りだが、
最後の最後にスピットの美しい姿をアップで俯瞰してみせる。
これは空の戦いのベスト映像。

同様に救出を待つ陸の、波打ち際に終結する兵士に降り注ぐ爆弾と機銃掃射を仰ぎ見る映像。
恐怖とともに神の意志が感じられる地べたのベスト映像。

もう一つのパートである民間クルーザーの志願救出の船長の決意と悲しみ。
沈みつつあるスピット、若者を救出すヨット、一秒を争う救出の空と海中からの映像。
民間人もすべて戦争に責任があることを教えてくれる海の上のベスト映像。

本国に帰りたい若者、
ドイツ空軍から彼らを守りたいRAF、
救出に志願する民間人たち、
この三つのパートは、その映像美はもとより、
タイムラグを付けることで観る僕に緊張を強いりながら
物語が最後にカチッと組み合わされていく
・・・・ダンケルク神話の誕生だった。

本シネマの脚本も担当しているノーラン監督のしてやったりが見えるようだった。
期待度も満足度も本年一番のノーランシネマだった。

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