ミス・ポター (2006)

文字数 812文字

【女性にぜひお奨めの愛すべき小品】 2007/5/28



ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)とノーマン(ユアン・マクレガー)の初々しい恋は、悲しみを乗り越え、信念に生きたミス・ポターを語るに欠かせないエピソードなんだろうな。
そうなんだね、20世紀初頭ではまだまだ女性の地位は認められていなくて、結婚相手すら自分の意志で決められなかった・・・ってことを思い出せてくれるわけだから。
こんな時代に、ピーターラビットを創りだしたビアトリクスは間違いなく異色の女性だったんだろう。
上流階級を気取る両親が「商人なんて汚い存在」と蔑むことに反発して、自分たちだって植民地で一山当てただけの成金の末裔だとして、両親に反発するビアトリクスこそは現代のフェミニズムのナチュラルな原型なのかもしれない。
意に染まない相手と結婚しないで婚期を逃したビアトリクス(おそらくは30代後半)が、商人である出版者ノーマンと一目で恋に落ちる展開に、僕の心も一緒に、ときめいていた。
生きている時代そのものに逆らわなくてはいけない恋、愛を隠していなければいけない恋ほど、激しくて美しいものはない。
ふたりの恋の小道具が、ピーターラビットであり、アヒルのジマイマである贅沢を、この際喜んで楽しまない手はない。
そして、絵のなかのピーターラビットがビアトリクスと会話をしたり、いたずらするのもシネマならではのおまけだ。

環境問題、特に自然破壊に対する抗議が作品の基調に感じられるが、僕はチョット薹のたったカップルの恋心のほうにとても感心してしまった。
そこには、いまや忘れてしまいそうな、恋する喜びと恥じらいがあったから。

いつものようにレニーはうまい、それでもユアン・マクレガーのツボにはまった英国紳士の雰囲気にはかなわなかったくらいユアン・マクレガーが生き生きとしていた。

女性に今これ以上がんばってもらっても困るような気もするが、女性にぜひお奨めの愛すべき小品である。
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