愛にイナズマ (2023)

文字数 664文字

【まったく瑕疵のない家族物語】 2023/11/2


うすら寒いテーマ「心を通じ合えない親子・兄妹なんていないんだよ」をこんなに美しく仕上げてくれるとすれば石井裕也監督意外にはいないという証明のシネマ だった。

といっても、その中身はこってりと濃く、一筋二筋くらいでは括ることはできない内容、それをきっちりとキャスト、スタッフが再現し支える構図になっていた。

いきなり小さな画面からのスタート、主人公(松岡茉優さん)の偏執的シネマ作りが端的に紹介される。 冒頭の製作現場シークエンスで、主人公が夢見る理想に立ちはだかる既存権力に屈する挫折、並行して奇妙な恋愛が動き出す。
さてさて、本シネマは何処に向かっていくのか?

章立て編成になっている・・・プロローグ、金、酒、カメラ、家族などシンプルワードのタイトル、顧客満足度アップのためなのか?
確かに、本作のように物語の起承転結が特異で目まぐるしい場合には一つの区切りとして悪くはないが、チープ感は否めない。
チープでないのが俳優陣、共演の窪田正孝さんはじめ、ゾロゾロ曲者俳優さんが登場して、しばしの名演技を披露する。
そんな俳優の締めとして強烈なインパクトを残してくれたのが佐藤浩市さん、余命一年の父親が眩しかった。

10年間も電話すらしなかった家族が、最後にはハグで存在を確認しあう。甘い甘い家族物語だけど、いまを生きる日本人のリアルな愛憎の息遣いが聞こえてきた。
「月」で人間の冷たさを、そして本作では人間のちょっとした勇気を教えてくれた石井監督、2023年賞対象シネマが出揃った。
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