ひかりのまち (1999)

文字数 504文字

【この世界こそ不思議の国さ】 2008/4/5



「ひかりのまち」にしろ原題「ワンダーランド」にしろ、
その象徴するところは、人間たちの営みへの「深き優しさ」だ。
まったく事件のない平坦な物語、だけど、退屈することなく清涼感が後に残った。
邦題はその意味では適切なガイダンスになった。

観終わると気づくのだが、本シネマはある家族5人のエピソードで構成されている。
他人の欠点を粗捜しするばかりのうるさい母親、
この妻にしてこの夫ありの無力でおとなしい父親、
ボーイフレンド探しに明け暮れる娘その①、
だめ男と離婚し息子と暮らす娘その②、
出産を控え夫が失踪する娘その③
謎に包まれている家出した息子。

ロンドンに生きる庶民生活がリアルに描かれる。
狭い住居、庭、隣住民との衝突、交流。
夜のソーホー、パブの喧騒にうごめく愛の数々。

どこにも特別なエピソードはない。
もしかしなくても、僕の周りにもこんな話は転がっている。
最後に登場する新しい生命が「アリス」。
「不思議の国のアリス」という決着なのだろう。

そうかもしれない、
楽しいことに満ち溢れているわけでもなく、
毎日歯を食いしばって生きるこの健気な人間たちの世界は、
不思議の国みたいなものかも。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み