鳩の撃退法 (2021)

文字数 693文字

【バラバラ事件】 2021/8/27



佐藤正午さん原作は未読だが、以前読ませていただいた「月の満ち欠け(2017年直木賞)」から推察しても、本シネマ原作にあったはずの妙味は感じ取ることはできなった。
原作未読の上なので、見当違いのコメントになるかもしれないが、本来ミステリーのシネマ化は困難なところに加えて、本作の見どころは劇中の作家が小説の内容を映像で再現するという、「叙述の見える化」、またはバラバラに発生した事件が最終章でパズルのようにピタリとはまるカタルシスだったのではないかと想像する。
さて、実際はどうだったかというと、
大掛かりなトリックは配置されていなかった、その代わりにオーソドックスな謎とき(事件解決)シークエンスが用意されていた。
その謎とき自体、顧客である僕を納得させるものでなかったことが本シネマの限界だったのか、宿命だったのか?
原作に、特にミステリー小説にこだわってしまうと細部に手をかける、これが謎解きのキーだという意気込みで。気が付くとシネマが原作に支配されていることになる、肝心なのは映像化に伴う原作の刈り込みなのに。

今シネマでは刈り込めなかった原作の残滓が至る所に顔を出し僕を当惑させる、それもかなり重要な要素に関して。
偽札は焼却したのではなかったのか?
そもそも、偽札はどのように犯罪に絡むのか?
金に執着しない反社会勢力とはいったい何者なのか?
殺されたのは誰? 子供はどうなった?
ヤクザのアネさんとの夜遊びは唐突だろう?

バラバラなキーがバラバラのまま捨て置かれてしまった。

主人公の作家がいみじくもこう語る
・・「説明過多は小説を壊す」
余計なシーンはシネマを壊す。
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