8 Mile (2002) 

文字数 695文字

【似たもの同士の無いものねだり】 2007/9/11



エミネム本人のカリスマを無視するわけにもいかないが、
ファンでもアンチでもない立場で鑑賞してみる。

そこに見えてきたのは、母と息子のあまりにも普遍的な関係だった。
ここにある母・息子は互いに、同じベクトルで相手を非難しながらも、心で労わっている。
若い男に生活を依存するしかない母親を、どうしても一人の女性として認めたがらない息子。
小さな妹のために働いて欲しいと、母に懇願する息子本人が地に足をつけて働いていない。
女として生きたい母、母として生きて欲しい息子、似たもの同士の無いものねだりだ。

キム・ベイジンガーとエミネムはこの普遍的親子世界構築で異様なリアリティと説得力を発揮している。ひとえにキムの力量ともいえない、エミネムのエミネムたるパワーをそこに感じた。

ミュージカルが苦手な僕には、ソングもラップも同じ、映像と一緒に飲み下せない体質的弱点がある。ただただラップのサウンドとリズムを映像のBGMに留め置くばかり、
おそらくは勿体無いことなんだろう。
そんな僕にも、MCバトルなどの未知の体験は新鮮だった、今頃になって遅いっていわれそうだが。
まぁ、これをきっかけにラップに嵌まることもないだろうけど、
エミネムには興味津々だ。
本作は大胆に比較すれば《長嶋茂雄物語》のようなものだろう、
一歩譲って《美空ひばり物語》か?
本人が主人公の役で出演するに近いものがあるという意味合いであるが・・・。
ただし、その彼の役者としての存在感は、例えにあげたヒーロー、ヒロインの比ではない。

いつか、僕にはよくわからないラップ抜きのシネマで再度まみえることを期待したい。

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