紀元前1万年 (2008) 

文字数 1,037文字

【地球の心、エメリッヒ監督】 2008/4/27



エメリッヒ監督というと、《インディペンデンス・デイ》、《デイ・アフター・トゥモロー》の印象が強く、
どちらも地球規模の壮大なシネマ映像にびっくら、あっけに取られた覚えがある。
そして、今回の意味不明、想定困難なタイトル・・・《 10,000BC》、
その真意やいかに!
興味深深のオープニングから僕はオマー・シャリフの巧みなナレーションによって、
いざなわれる。
エメリッヒ監督は、また今回も「地球そのもの」になっていた。
揶揄してるわけではないが地球の心を代弁するエメリッヒ監督の
柄がしのばれるようで楽しい。
ところで、
2万年前の地球はどんな状態だったのだろうか?
地球履歴書によれば現人類が現れた頃だそうだが、確かなことなど誰もわからない、
そりゃそうだろう。
そう、悪宇宙人や寒冷化に襲われる未来のことがわからないのと同じようには、
2万年前も未知の世界。

思いがけず、2万年前の人類たちがクールだったり、悪企み首謀者がチャイナ系らしきだったりしても、だから許されるものだろう、僕は許す。
このように歯止めの無い荒唐無稽の世界をBC1万年にセットしたことが
エメリッヒ監督の勝因だった。

冒険あり、追跡あり、もちろん愛あり、友情あり、親子愛あり、巨大建造物ありの
大スペクタクル。
BC10,000年ならではのお約束の怪獣たちも、これまたお約束のようになかなか姿を見せず・・・あぁ怖い。

本シネマのテーマは「愛」、
伝説となる主人公たちの「愛」なのだが、その踏み台になっているのが「神」。
エメリッヒ監督、神をあっさりと否定してくれる、実に見事にあっさりと。
まるで、現代世界のコングロマリットCEOをスキャンダルで葬り去るように神を放逐する。
その神に取って代わるものこそが《伝説》なのだそうな。
僕はこの視点を感じたことだけで本シネマに価値を認めたい。
「地球」は神を必要としていない、そこに伝説があるから。

エメリッヒ監督が見せてくれた人類の原点とは、
未来への不安を解消してくれた前2作を包括する地球伝説に他ならない。
曰く、
人類のリーダーは地球から与えられた使命、
実に10,000年BCから継承されてきた使命がある、これこそが伝説。
監督の得意げな顔が浮かんできそうだ。

老婆心:
コンセプトはいいのだけど、ターゲットをひろく設定したのだろう、
仕上がりは万人向きの普及版になっている。
メル・ギブソンの《アポカリプト》のアクション一途を垣間見たものには
物足りなさが鬱積する。

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