ムーンライト (2016) 

文字数 692文字

【格調高い問題提起】 2017/4/2



格差の一番の原因が「人種差別」であることを
差別されてきた黒人の静かな言葉で切々と訴えてくる。
貧困シングルマザー家庭、薬物使用の日常、学校でのいじめ・暴力、ゲイへの偏見が、
本シネマに凝縮されている。
シネマは全編黒人コミュニティ内でのこの希望のない鬱積感を伝えようとする。

いや、そんな問題は黒人社会だけではなくアメリカ全土、
すべての人種に等しく降りかかっているものなのだが、
シネマは執拗に黒人をフォーカスする。
実際、出演者はほぼ黒人、その他の人種はエキストラ程度しか登場しない。
そのため、黒人を差別するお決まりの白人も、差別反対のリベラルな白人も
本作ではバッサリと切り捨てられ、
追いつめられ黒人主人公の苦しみに僕はシンクロする。

シネマ構成として、主人公は少年期、高校生時代、成人の3部で描かれ、
それぞれ異なる俳優が演じ分ける。
物語の時間経過から当然のキャスティングなのだが、この3期間に変貌していく主人公、
何も変わっていない主人公が鮮やかに対比される。
この演出は本シネマの価値を高める大きな要因になっている。

小さい頃父親のやさしさを疑似体験した主人公が、
その男のコピーとなる哀しさ、
最後には母親を許してしまう優しさ、
ゲイと呼ばれようとも一つの愛にすがる純情さ、
これらのエピソードは、繰り返すようだが 特に黒人のもつ特徴でも何でもない。

だがそれは、アメリカ歴史の底にたまった人種差別の澱から染み出したものだとシネマは語る。

ムーンライトの下で黒人は「ブルー」に見える、
でもブルーと呼ばれることはなかった・・・
シネマの中の悲しいエピソードに語る言葉もない。

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