さらば、ベルリン (2006)

文字数 782文字

【ノスタルジックに徹して】 2007/9/23



モノクロ映像が美しい。
ライティングが凝っているが、
これはモノクロ撮影の特典であり必然。
懐かしいスクリーンに心が和んで仕方が無かった。
久しぶりにお目にかかった「THE END」マーク、
ああ、シネマを観ていたんだなぁ・・・と思った。

ソダーバーグ監督の思い入れはこれに留まらない。
1945b年当時の実写ニュースフィルムと区別のつかない、
ベルリン、ポツダムの荒廃した街並み、
戦火で壊れた建物、部屋、進駐部隊のオフィスが
モノクロトーンならではのリアリティで甦っている。

シネマの仕上がり具合もこれまたノスタルジックに徹している、
戦時に作られたシネマといわれても信じたかもしれない、
例えばヒッチコックの手によるもの・・・。
こんな感想だと、いかにも古臭い雰囲気を想像させるけど、実はそのとおりだ。

しかし、ケイト・ブランシェットの役柄は決して昔のシネマでは巡りあえないはずだ。
ナチスドイツのベルリンを生き抜いたユダヤ人女性、
残念ながら昔のシネマでは想定すらされない人間像だったろう。
本シネマは、この美しい謎の女、レーナの物語であり、
ケイト・ブランシェットのシネマになっている。

その代償として、ストーリー展開が簡略化されていないかと、
大きなお世話ながら危惧している。
たしかに、くどいほど説明過多のジョゼフ・キャノンの原作を
ここまでアレンジした脚本は労作だ。
その分、最小のエッセンスに研ぎ澄まされたプロットの妙は、
よそ見していると指先からこぼれてしまう。

それでも、無理をしてでも昔のシネマらしく短く(108分)まとめたかった気持ちが
伝わってくる。
ジョージ・クルーニにも久しぶりにたっぷり逢えることだし、
ここは監督の「思いと意気」を買ってあげたい。

こだわることがあまりにも少ない世の中なんて、
どこにでもあるシネマなんて、
つまらないではないか。

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