家へ帰ろう (2017) 

文字数 845文字

【ホロコーストへの憤怒】 (2018/12/26)



ポーランド生まれのユダヤ人アブラハム、90歳を目前にして親友に会うため忌み嫌うポーランドに旅立つ。
彼が言葉にも出さない(必要なときは筆記する)ポーランドとは・・・・・?
そして、そんな彼が会いたい人は、渡したいものは?
アルゼンチンからポーランドまで、途中マドリッド、パリを経由する老いたユダヤ人のロードムーヴィーは
怒りと哀しみに満ちていた。

本作は各地のユダヤ人コミュニティのシネマ賞を総なめにしたとのこと、
さほどにユダヤ人の怒りは強くいささかも消えてはいない。
シネマではマドリッドからパリ経由でポーランドに乗り換える際、ドイツの地に足をつけたくないといって
周りを困らせる主人公。その時にもポーランドという言葉は発しないで筆談になる。
過剰な演出ではない、
僕もドイツには基本的に足を踏み入れたくないという国際ビジネスマンを知っている、彼はユダヤ人だ。
シネマはポーランドにおけるホロコーストとナチスの残虐性、
そしてユダヤ人を見捨てたポーランド、彼を助けた親友をフラッシュバックさせ、
老齢・病身ゆえの意識混濁のなか目的地に向かっていく。

旅の途中で出会う人々:
彼に救われる文無しのスペイン人ミュージシャン、
心優しい宿の女主人、
再会を果たす勘当した娘、
列車内で何かと世話をしてくれるドイツ人女性、
ポーランドでのラストランを手助けするポーランド看護師、
彼らから発するメッセージはみな主人公に優しい、特にドイツ人女性からは謝罪と後悔が込められている。

アブラハムは果たして生まれた「家(うち)」にたどり着けるのか、そこに親友はまだいるのか?
彼がアルゼンチンから持ってきた親友のための「スーツ」は無事に手渡されるのか?

人生にはやり残したものがある。
すべて満足のいく終わり方などない。
ほとんどのユダヤ人が抹殺されたポーランドに、病身をおして戻ってまでやり残したものを始末する主人公。
そんな生きざまが僕にもお手本にならないわけがない。
大したことのない僕の人生でも。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み