バッドタイム  (2005)

文字数 665文字

【ホントは「グッド・タイム」?】 2008/5/6



クリスチャン・ベイル、性格俳優たる実績を余すところなく結集した面目躍如の逸品。
破滅人格を演じた《マシニスト》では彼の役者魂を思い知らされたが、
今作品でも外に向かって壊れていく、かってない暴力自滅タイプを明解に演じしてくれた。

またぞろ、アフガン戦争で精神を病んだもと特殊部隊兵士が主人公。
LAのチンピラだった彼が、戦争から帰還後応募した警官採用試験に落ちたところから、
その転落の道筋を悲しいまで克明に描いている。

タイトルどおり、この主人公はついていない。
好きな女と結婚するには警官になろう・・という建前の裏に見える悪徳警官志向。
薬物、銃器の不法取引に手を染めることになんら罪の意識もない幼児性。
戦場で傷ついた精神がそうさせるのか?
シネマは、矮小な戦争トラウマに固執することなくアメリカの病んだ社会を映し出す。
相変わらずの人種間の隔たりと憎しみ、
仕事探しに見えてくる貧富の差、日常になっている殺人。

僕が瞠目したのは、この信頼に足らない元兵士を政府機関が採用するくだり。
主人公をまたも利用しようとする役人たちの目に彼は単なる殺戮マシンにしか見えていない。
互いに愛国心、お国のためなどとごまかし、決して彼の精神が救済されることはない。

クライマックスに至るまで終始執拗な「つきの悪さ」
・・・観ていてこちらも泣けてきそうになる。
主人公には確かに「バッド・タイム」だったが、親友の未来を含め世の中には「グッド・タイム」であった。
もしかして本人にも、本当は「グッド・タイム」だったと僕は思いたい。
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