劇場 (2020)

文字数 684文字

【陳腐なテーマを救った二人】 2020/7/17



「コロナとの共生」を象徴するようなAMAZONでの封切、 
新しい時代に生きることを実感したシネマになった。

芥川賞先生の原作は未読だったが、「火花」に続く下積み青年物語に
違いない…いわゆる若き日々の後悔と懐かしさを追いかけている。

ナルシストの演劇青年、
(もっともナルシストでなければこの業界では生きていけないのだが)
と彼を無条件で愛する女性とのドロドロの生き様を丁寧に描いている。
2時間超えの物語で繰り返されるヒモ男の横暴、
それに笑って耐えるこころ広き女の構図は、
古今東西において男女愛の定番であるが、
敢えて行定監督はその定番をオーソドックスに再現して見せる、
これでもか! という具合に。

観ている僕は変化のなさに苛立ちと鬱積すると同時に、
どこかに自分自身の胸に突き刺さる痛みを感じる
こんな若者であった頃を僕は思い出して、そっと恥ずかしくなる。

自分だけが可愛かったあの頃、人に要求するばかりだった生き方を思い出しながら、
では今いったいお前はどう変わったのかと自分に問いかける。
長く生きてきたからと言って許されるような人間に成長しているのかと?

無論僕は演劇界とはまるで関係のない境遇だが、
この若き日々の痛みはどこか共通する想いで一杯だった。
ラストシーンは僕にとっても懺悔のシーンだった、
素直に謝ることができなかった人生だが、今からでも遅くはないと思った。
そんなことを考えてしまう本シネマ、名作に違いなかった。

山崎賢人さん、松岡茉優さん 
お二人の熱演に、われを忘れて若き日に戻ることができた、
これもシネマの悦楽に違いない。
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