ナイトメア・アリー (2021)

文字数 739文字

【ナイトメアは今ここに】 2022/3/31



それほどナイトメアではなかった。
これまでのギレルモ・デル・トロ監督作「パンズ・ラビリンス(2005)」、「クリムゾン・ピーク(2015)」、「シェイプ・オブ・ウォーター(2017)」に比べると、ぞくぞくする非現実感も和らぎ、寝覚めの苦い悪夢と現実との落差も小さかった。
本シネマは、詐欺という原始的な犯罪物語りを嫌になるほど丁寧に説明してくれているという点においては科学的ですらある、ナイトメアの出番はなかった。
適切な言い回しとしては、犯罪者に襲いかかる因果応報なのかな。

オクラハマ出身の田舎者が読心術を騙る詐欺師に成り上がり、調子に乗り過ぎて自滅するのは神や仏や天のお仕置きだとすれば、ナイトメアですらない。
ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラーという豪華キャスティングにナイトメアの悪い寝覚めをイメージするのも一興だったが、あまりにもハリウッドメソッドが強烈だった、彼らに得体のしれないナイトメアを創造させるのは無理があった。
それはギレルモ・デル・トロのパワー不足に起因する。

本シネマに欠けていたのは「愛」、アイデンティティへの執着愛でもよかったし、映像美への偏愛でも、本能的生殖愛でもよかったが、本シネマでは「愛」は描き切れなかった。
それとも、愛なき世界をさらけ出すことがデル・トロ監督の狙いだったのか?
物語りは1941年12月7日の真珠湾奇襲攻撃の日に大きなカタストロフィが訪れる、そこから主人公詐欺師にのナイトメアが始まるともいえる。
獣人というキーワードと戦争がオーバーラップしてくる。
今まさにこの時2022年春、人類は獣人として愛のない悲惨な戦争を持て余している。
ナイトメアを予言したかのように。
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