大いなる陰謀 (2007) 

文字数 736文字

【政治的で結構】 2008/9/8



「普通の人々(オーディナリー・ピープル)」で証明したモンタージュの手腕は
影を潜めたた代わりに、
大人の寓話にも似た三題噺を「普通」に描き出すレッドフォードに、
やはり非凡な才能を見せらつけられた。

政治、メディア、教育・・・
それぞれの分野に影響力を有する人物を通して、
現代アメリカの構造的欠陥を僕は理解できた・・・
もちろんレッドフォードのアイロニーはひとつアメリカに留まらず
日本にとっても意味深いものになる。
安易に、「政治の傲慢」、「メディアの偏向」、「教育の空疎」と断罪するのは精確さを欠くものであるが、
前述のように「大人のための寓話」として素直に警鐘に耳を傾けるべきだろう。

今作品では、モンタージュの代わりに「ストレートな会話」、
それもスピードと難解さに満ちた言葉が弾丸のように飛び交っている。
シネマが長い歴史の中で磨き上げてきた簡略化、メタファーの技は、
ここでは躊躇なく「リアリティー」にその場を譲っている。
シネマクリエーターの力量不足・・と誤解される危険を敢えて冒してまで
主役上院議員のアジテーションをダラダラとスクリーンに晒している。
しかし、
トム・クルーズの好演もあって僕はアメリカ政治の貧困に深く共鳴してしまった。
残りの2極を代表するメリル・ストリープ(メディア)、レッドフォード自身(教育)は、
彼らとしては最小のアシストで、政治の危機を煽動することに成功している。

本シネマが政治的でないとは言わないが、
政治的だからといってネガティブにはならなかった。
時折、適切にシネマが政治メッセージを発信することを受け入れるぐらいの、
余裕を持ったシネマファンでありたいと僕は願っている。

豪華な俳優たち、ユニークな構成、面白くないわけもなかった。

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