アオラレ (2020)

文字数 547文字

【嬉々として暴力を演じる】2021/6/3



グラディエイターの精悍な面影は近年うかがい知ることもできない中年太りのラッセル・クロウが、ぶっちぎれた絶望男を演じている。
粗暴な性格だというゴシップで有名なご本人には適役だったに違いないが、今作の暴力度は最高値に飛び跳ね上がっていた。

まず、オープニング・シークエンスで主人公の虐殺シーンが紹介される、
どうやら別れた妻と新しい相手が獲物だったらしい、なんとも空恐ろしいシネマが始まったものよと、僕は覚悟を決める。
邦題にもなっている「あおり運転」は、逃走中の指名手配容疑者としては愚かなる行為なのであるが、もう本人は自滅観念にとらわれているから何も怖いものなしである。
あおりの対象になった母息子と、犯人との壮絶な追跡・殺戮ゲームが続いていく。
ここまで、シネマのネタバレに近い説明だと危惧する方はご安心あれ、恐怖のハプニングは沢山用意されている、お愉しみはまだまだだ。

本作は、つまるところ暴力を媒体としたスリラードラマであり、それでしかなかった。
富の格差、社会的救済の欠如、訴訟社会、公的薬物の氾濫などの視点はちらりと触れられるが、あくまでも添え物でしかなかった。
だから、なおさら、
ラッセル・クロウが嬉々としてこの暴力男を演じていたように思えて仕方がなかった
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み