逃走迷路 (1942) 

文字数 687文字

【名品習作】1979/11/20



1942年製作、まさに戦意高揚作である。
40年近く前の戦中シネマを単純に感覚の違いで、
面白くないと言い切ることはできないが・・・。

英国人ヒッチコックがハリウッドで撮ったアメリカPR映画なのだが、
ヒッチコックらしい細やかな観察が随所に見える。
それも彼らしい、もっと言うと英国人らしい皮肉っぽい切り口で
ヤンキー魂をスクリーンで発揚している。

ヤンキーは自由をとことん愛し、権力に屈せず明るい性格、
対するナチたちは、アメリカ解釈の「悪の権化」として明確に区別されて描かれている。

ヒッチコックにしては登場人物が画一的なのが物足りないところだが、
まっ、いたしかたなしか?
それでも、この作品のなかには後年の傑作の要素が、そこここに鏤められている。
シネマのテーマにもなっている、
「ひとりだけに負わされる、大きすぎる秘密」パターンがそうである。
サボタージュ計画を知ってしまうが、
他人は信用できず、
自らも追われる身であり、
潔白を証明するためにも自力で悪に立ち向かう・・・
と言う荒筋がまさにこれ。

ヒッチコックに限らずこの「巻き込まれ型トラブル」はシネマでは定番だが、
ロスからニューヨークまでの追跡劇のなかで、
主人公を助ける善意の自由人が登場してくるのも またヒッチコックパターンである。
そんななか、どうしても気になって仕方なかったのが;
●「自由の女神像」から浮かんでくる「グランドキャニオンの石像」
●「プリシラ・レイン」と「エバー・マリー・セイント」の類似性
●手を差し伸ばす美女のエンディング

名作「北北西に進路をとれ」の習作に思えたのは、巨匠には失礼だったろうか?
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