ミナリ (2020)

文字数 745文字

【天才たちが奏でる平凡の美しさ】



ハリウッドの韓国ブームが止みそうもない。
本シネマのテーマはありきたりすぎる・・と勝手に心配し過ぎてしまう「移民」。
韓国では生きていけないと思い至った男、
彼にしたがっているが決して自分を曲げることの無い強い妻、
聡明な長女に病弱だがやんちゃな長男、
まるでシネマの教科書のような設定で、苦難の農業事業が始まる。

そう簡単に無手勝流農業が成功するはずもなく、降り注ぐ試練の連続、
どれもこれもシネマ顧客である僕を驚かせるような仕掛けのない平坦さだ。
でも、退屈しない。

アーカンソーの片田舎の風景が心に和む、
古ぼけたトレーラーハウスのセットに家族の暖かさを感じる、
夫婦のあけすけな口喧嘩も好ましい。

そして、妻方のおばあちゃんがやってくる。
物語りは一気に活気を帯びてくる、
でも今までの穏やかさがもっと続いてほしかったと悔しがっている自分もいた。
なんとも監督の術中にすっぽりとはまってしまい、
素直にシネマを愉しむコアなシネマファンがそこにいた。

おばあちゃんが巻き起こす嵐も、とうていトルネードの迫力はない、
日常の家族に見られる微笑ましいエピソードだった。
クライマックスに用意されていた災難も、
観客全員の念で吹き飛ばせると思えるくらい僕は彼ら一家の心のなかに住み着いていた。
「そうだよ、ミナリだよ」って。

レーガン大統領時代、1980年代のバブル経済のアメリカ、人種差別もない農業州アーカンソー、そこは間違いなく自由の国アメリカだった。

リー・アイザック・チョン監督、製作にもかかわっている主演したスティーブン・ユァンら韓国系アメリカ人らが醸し出す天賦の緻密さ。
キム・イェリ、ユン・ヨジョンらの韓国女優陣の奔放かつ溌剌さ。

当分の間 ハリウッドでは韓国トルネードが吹き暴れるに違いなし。

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