アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男 (2016)

文字数 817文字

【EUの盟主たれ】 2017/1/11



「アイヒマン」の名前は僕の記憶に強く残っている。
アイヒマン逮捕は1960年だったのだとしたら、小学校4年生の時だったのか、日本の新聞でも大きく長く取り上げられていたことを覚えているくらいだ。
その時に、強制収容所アウシュビッツという言葉を知りえたのだろう、以後ナチスの戦争犯罪といえば「アイヒマン」が頭に浮かんできた。

本シネマは、アイヒマンをドイツ法廷で裁くことを念願したユダヤ人検事長とその部下の検事の生き方に深くかかわっていく。
むろん、アイヒマン捜索の苦労話、モサドとの交渉などあまりシネマでも描かれたことのないエピソードも得難いものだった。その意味では、戦争犯罪人狩りのサスペンスとしても楽しめる。

しかし、この物語には大きな仕掛けがある。
ハンターたるドイツ側検事二人の性的趣向がゲイである点が強調されていた。
当時は(今でもそうかもしれないが)大きなスキャンダルであり、ナチスの生き残りからの攻撃の格好の的になるというアナザーストーリーが伏線にある。
突き詰めれば、亡命先から戻ってナチス狩りをするユダヤ人検事長の孤独、
その人柄以上に好意を持つ若い検事の思慕がシネマの横糸になっている。

シネマでは詳しく語られていないが、アイヒマンを拉致したイスラエルに結局ドイツは送還申請することなく、アイヒマンはイスラエルで処刑される。
そうなんだ、アイヒマンはモサドのヒーローストーリーの獲物として僕の記憶の中にいた、そこにはドイツのかかわりはなかった。

ナチス狩りの検事長がどのように国内で孤立していたのか、その環境の中で真のドイツのためにナチスを追う検事長の真意はどこにあったのか?
若者たちとのTV討論会で民主主義を解き明かす主人公・・・
「いかに立派な憲法があっても、国が国民が善を成し得ることを示さなければ、世界から信頼は得られない」

いまに至ってもドイツがEUの盟主として奮闘している根源を見た思いがした。
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