ミッドナイト イーグル (2007)

文字数 903文字

【言い訳下手ですね】 2008/6/9



本シネマの原作は未読だが、
本シネマのおかげで原作への触手は微動だにしなかった。
僕のミステリ・サスペンスライブラリーの引き出しなんてたいしたものではないが、
結果として、高嶋コレクションの機会は潰えた。
かように文化連鎖なんてことは冷厳で気まぐれなもの。
そのくらい印象の希薄なシネマだった、
これほどのスケール感がありながら勿体無い。

その恨みのキーワードは「言い訳」。
シネマファンの立場で我が侭を言えば、
もっとテンポが欲しかったといえるが、
それ以上にテーマそのものでもある、
この大それた「言い訳」が1時間半背中でチクチクとむずがゆかった。
その要因は「防衛省」、
メジャーな省に昇格したご祝儀としか思えない褒め殺しの数々。
●「われわれは軍隊ではない、自衛隊だ」これはエリート防大卒指揮官の言葉。
まずは本シネマが拠って立つ原則の「言い訳」があった。
●仮想敵国の素性が最後まで明らかにされないのも可笑しな遠慮だった。
自衛隊は、仮想敵国といえども刺激する権限はないという「言い訳」か?
敵特攻兵士に言葉が無いのはまだ納得できるが、
工作員までが無言なのは却って不自然、ハングル語でしょうが?
●またぞろ「アメリカは進駐軍だから勝手、日本国総理も知らない軍事秘密がある」
との言い訳、
敗戦国の悲惨を引きずったこれまた歴史的筋金入りの「言い訳」にとうとう脱帽した。
その集大成が、結局自分たちでは何も解決できず、
またもやあのパトロンに頼ってしまう感動のクライマックス。

主人公の元戦場カメラマンも「言い訳」で自らを毀すキャラクターという徹底振りはお見事。
彼は妻や息子や義理の妹に甘える日本男子の伝統的「言い訳チャンピオン」の如し、
言い訳ばかり考えているうちに、
自衛隊という大きな言い訳に呑み込まれてしまうのは、
よくよく企てられたアイロニーなのか?

アイロニーといえば、
自衛隊は結局自国を守れなかったという、逆方向とてつもない結論になっている。
この事実からすれば、確かにこの集団は「軍隊ではない」のかもしれない。
果たしてそれが防衛省の狙いだったのか。
誰か本シネマのもっともらしい「言い訳」を考えてください。



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