フォックスキャッチャー (2014)

文字数 680文字

【俳優の本分が怖い】 2015/2/16



デュポン財閥の後継者であるジョン・デュポンによる殺人事件をテーマにしている。
シネマはその悲劇に至るまでのデュポン氏の狂気をじわじわと、それも淡々と描いていく。
僕はこの事件をまったく知らなかった。
彼が私設のレスリングチームや、全米レスリング協会に多額のマネーを使っていたことなど
もっともっと知らなかった。
その意味から、事実に基づいた物語とはいえ新鮮な強烈な衝撃を受けた。
単純に「セレブの狂気」に驚かされ、恐怖を感じた。

ベネット・ミラー監督の実績である
「カポーティ」、「マネー・ボール」から特に逸脱するシネマではないだろう。
有名人の行動・思考を簡略にえぐり出す手法は今作でも変わりがなかったが、
いかんせん今作では悲惨な事件がクライマックスとなった。
今更、何の教訓があるのだろうかと戸惑ってしまう。
強いて理由づけをするならば、富の施しは難しいもの、まして格差解消などなおさらのこと。

実は本シネマの見所はキャスティングにある。
現時点でアカデミー主演男優賞にノミネートされているスティーブ・カレルをはじめ、
マーク・ラファロ、チャニング・テイタムが「変に怖い」のである。
無論俳優の本分は「いかに役に化けること」に尽きるのだろうが、
今シネマではこれまでのかれらのイメージとのギャップが尋常ではない。
スティーブ・カレルの精神の壊れ具合が怖い。
マーク・ラファロの誠実、怜悧がこれまた怖い。
チャニング・テイタムの白痴ぶりが全く怖い。
オマケとして、バネッサ・レッドグレーブの老いに光る知性と後悔が救いがたく怖い。

結局、怖いばかりの物語だった。

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