ヤング・ゼネレーション (1979)

文字数 690文字

【記憶の棚の宝物】 1980/10/23



「自分のこと、そして自分の周りの人間を描けば誰でもすばらしい映画を作ることができる」
と言ったのは、新藤兼人監督であるが、この言葉が思い出されるシネマに巡り会った。
観終わった後、心の中にとても暖かいものがこみ上げてきたのも久しぶりだった。

製作・監督のピーター・イエーツ自身の物語であろうと考えれば、
彼の作品(「ブリット」「ザ・ディープ」)にみられる、男臭さの原型を感じ、
監督の人柄にも触れたような不思議な気持ちになった。
原題のBREAKING AWAYとは「離脱」。

青春の苦しみ、後悔し切れない思い出につながる、懐かしくも哀しい響きがする。
30歳を過ぎてから余計に青春時代(特に高校生活)が思い出される僕にとって、
主人公デイブ(デニス・クリストファー好演)の生き方に
自分の青春そのものを感じてしまった。

田舎町の大学の学生たちに反発する地元の若者。
デイブが大学生との差別に対抗する姿は、
若者特有の気負いと照れもあるが、そんな姿に僕はまたまた共感し羨んでしまっていた。
自分の進路が体制の中で組織的に準備されていく思い出しかなかった僕には、
デイブの悩みは、贅沢なゆとりのようにも感じられたのだった。

最後に、大胆にもデイブを大学生に仕立て上げることで、
デイブの悩み、観客のストレスを解き放っってしまう。
それでもデイブの青春は輝いていた。

デイブが自転車競技に打込むなかで、イタリア、フランスにかぶれていく経緯も愉快。
監督のアメリカ保守社会への皮肉としては、なかなか洒落ていた。
あまり話題にならなかった佳作を、
そっと記憶の棚に入れておく密かな悦びもある。
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