ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 (2023) 

文字数 781文字

【現代に重なる上質ラブストーリー 】2024/2/7



ジャンヌ・デュ・バリー夫人と言われても全く心当たりはなかった。
世界史は好きだったけど、教科書に出てくる人物ではないようだということが本シネマを拝見してよーくわかったが、教科書の事実よりも何倍も興味深い物語だった。

それもこれも、すべてはジョニー・デップのおかげだった。
ジョニー・デップがルイ15世を演じる、それもフランス語を喋り、フランス革命の重要な時期に生きた国王を演じる、周りをフランスの役者さんに囲まれて・・・といういくぶんバイアスのかかった動機から始まった。
ただし、この物語をジョニーを擁してハリウッドが製作し、全員が英語を喋り散らす最悪の状況は避けられただろう・・くらいの消極的容認があったのも一方の事実だった。

本作の真髄はそんなところにはなかった、まことに不勉強だった我が身を今は恥じている。
本シネマは、監督・主演のマイウェンのシネマだったことに気づいた、封建社会の底辺から這い上がり人生を謳歌した一人の女性闘士がテーマの痛快歴史物語だった。
もしかして、ジャンヌ・デュ・バリーはフランスでは著名なのだろうが、おそらく世界規模になるとぼくのような凡人は彼女のことなど知る由もないのだろう、国王の愛人という立場自体がもはや死語になっている現在ではなおさらだ。

シネマはフランス革命直前の華やかで豪勢な王宮生活が描かれ、そこに異分子として入り込むジャンヌの闘いが全編を貫く。
そこに現代の富の格差に抑圧される数多くの人たちの悲痛な想いが重なって浮かび上がってくる。

ジョニー・デップで観客を呼び込み、すべての差別、格差に抵抗するフランスを世界に示すマイウェン。
その思想の尊さもさることながら、美しい映像とエスプリの数々を従えた国王とジャンヌとの真の愛、シネマそのものも上質だった。
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