潜水服は蝶の夢を見る (2007)

文字数 595文字

【だらだら人生してませんか?】 2008/8/9



主人公のモノローグが怖い。
実際はモノローグではなくて、心の叫びなのだけど。

オープニング、
死から甦って自分の病症を知るところから始まって、
ラスト、
自らの死を覚悟するまでの心の叫びに込められる、
「皮肉」、「怒り」、「諦め」の感情のバリエーションが、
怖いほど切ない。
観ている僕は、間違いなく彼の肉体に、精神に同化してその叫びを聞いていた。

ストーリーの輝点は、主人公の不屈の魂であることには違いない。
その感動を否定することは誰にもできない。
若くして成功したエディターに突然訪れた病魔、
誰にでも起こりうるという想いが、この感動をいやがおう高める。
そして、
「自分には、こんなことが果たしてできるだろうか?」と問いかける。

それはそれで深いテーマである。
でも僕は少し、ほんの少し別角度から主人公の生と死を考えてしまう。
「人生でやりたい事」を「いつか手をつけよう」と思っていると、
結局は「時」の意地悪に負けてしまう・・・
・・・この年になって僕は一体なにを成し遂げたのかと。

いつか、いつかと思いながら、
そのままこの世から消えていくのが人間の宿命であることを、
彼は痛烈に親切に教えてくれた。
だらだらと生きていくことはできない、つくづくそう思った。

老婆心:
主人公が死の直前に成し遂げたことは彼の本望だったのか、ただの一矢だったのか?
悔いが残らなかったことと思いたい。
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