ある天文学者の恋文 (2016) 

文字数 824文字

【イタリア美学の粋】 2016/9/23



ジョゼッペ・トルナトーレ作・演出、エンニオ・モリコーネ音楽 
そこにはイタリア美学の粋が仕上がっていた。

物語は天文学を学ぶ女子大生と老教授との人目をはばかる恋に起こった突然の男の死、
そこから始まる教授からの愛のメッセージのミステリー展開だ。
僕は女子学生の苦悩と戸惑いに共鳴しながら、この展開にのめりこんでいった。

この手の仕掛け(死後、家族や恋人にメッセージが届く)はシネマにおいて特に珍しいものではない、「P.S.アイラブユー」などのコンセプトに近い。

本シネマが胸を打つのには、残されたヒロインを演じる 
オルガ・キュリレンコの貢献が大きい。
アルバイトで危険なスタントの仕事に臆することもない彼女には、
深く秘めた暗い過去があった。
恋人の突然の死の悲しみのなか、
絶妙のタイミングで届く手紙、メール、動画に真正面から立向かう主人公の心の葛藤を
キュリレンコは見事に演じている。

彼女はほぼ全編ノーメイクに近い素顔をさらしながら、
「007/慰めの報酬」のスタントパロディなどもサービスしてくれる。
なにより、教授からのビデオ動画に対して一人で演技を合わせていくという
困難な撮影スタイルもクリアーしていた。

呆然自失のシャワーシーン、複数回見ることのできる落涙シーンには
キュリレンコの底しれない演技パワーを実感させられた。
もちろんトルナトーレ監督お得意のミステリー展開も魅力だけど、
本作ではそこはポイントになっていない。
死の直前に準備した恋人への最後のCorrespondence(伝言)は
僕に震えるほどの哀しみをもたらした。

人は永遠の命を約束されて生まれたのにかかわらず、
限りある一生を送るのには何処かで何かの失敗をしたからだと、
教授は伝える。
では、教授の犯した失敗とは・・・?
・・・泣けてくる。

老婆心
1.老教授はその道の権威なのだろうが、強烈であろうセックスアピール度が感じられない?
2.相変わらずの、お粗末な日本語タイトル

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