海賊とよばれた男 (2016)

文字数 591文字

【シネマによる浄化,精製】 2016/12/22



本屋大賞の権威を疑うような企業史PR小説受賞にうんざりした記憶がある。
その底流に、ニューナショナリズムの旗振り役としての胡散臭さも感じていた。
さて、
そんな物語をどう調理すれば香りさわやかにシネマとして味わうことができるのか?
監督もやりがいのあるお仕事だったに違いない。

「企業経営は博打」と豪語する店主に付き従う店員たちの心意気が上品に再現される。
仕事人間にはやりがいのある職場、
店主はどこかで店員を見守っている、
店主に言われたことを実行するのが仕事、
などなど、今時の管理されたグローバル企業活動からは縁遠いセリフが飛び出してくる。

日本民族の経済にとって石油は血の一滴に等しいとまで断言する。
こんな激励に後押しされて戦場に向かった若者がどれほどいたことか。
しかしシネマでは、その戦争への嫌悪感を直截に表してくれる。
戦争ではない経済活動で日本は戦い生き残るという強いメッセージが感じられた。

民族系企業、大家族主義、メジャー企業への反発、管理社会への抵抗
・・・など、現在の日本社会がほぼなくしてしまった宝物を
主人公店主は約束し、実現していく。

そこには、原作にあった扇動的な作為はもはや感じられなかった。
講談調のの語り口は、演技人によって浄化され、構成によって精製されていた。
「永遠の0」に続いて、シネマのパワーを目の当たりにした思いだった。

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