エクソダス:神と王 (2014)

文字数 820文字

【「グラディエーター」のデジャブ】 2015/2/1



名作「十戒」のリメイクであることは承知して拝見した、
「十戒」リアルタイム観客としても大変興味深かった。
一言でいえば、
リドリー・スコットにかかれば「出エジプト」も、
いや「旧約聖書」もマイルドで軽妙な物語になる。
それが監督の特技であるから仕方がない。
宗教的、歴史的観点からクレームが出るのかもしれないが、
リドリーシネマとして楽しめないのは哀しいことに違いない。
まして、モーゼをクリスチャン・ベイルが演じるのだ、
とうとう天才少年も頂点に登りつめた思いだ、それだけでも僕には意義深かった。

「十戒」にこびりついていた抹香臭さは仏教徒の僕には大いなる違和感として残っている
(もっとも小学生のころだから仕方ないか?)
今回のリメイクでは意識的に宗教要素を取り外しているように感じられた。

なんといっても、「ゴッド」が子供の姿で現れる。
クライマックスの紅海の割れ目は、実は地震による津波の前兆(引き波)だ。
十の災害も天候不順に起因する自然界の連鎖によるものだと、学者が分析する。
極め付きなのが、「十戒」の石版は彷徨えるヘブライ人統括の政治的道具として
モーゼ自身が彫り刻んだ。
モーゼが見た子供の姿をした「ゴッド」は他の人間には見えない
実はモーゼは自分の決断に神の声を上手く利用した、
40万の民を束ねるには、それが最良の策だった。
いやはや、クリスチャン・ベールが有能な企業経営者に見えてきた。
そこにはもう抹香の臭いはしていなかった。

やっぱり、聖書の現代的解釈ができるとすればリドリー・スコットしかいない。
なにせローマ帝国継承者が、見世物剣闘士になって復讐を為す事すら
お茶の子さいさいなのだから。

そう言えば、「グラディエーター」に観た、
戦闘シーンや勇壮な山々を旅する俯瞰ショットも今作で再現されている。
そう言えば、よく似た人物設定だったことに今頃気がついた。
モーゼと剣闘士風情を一緒にするなと文句が出そうであるが。

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