誰よりも狙われた男 (2013)

文字数 525文字

【時代に染まらない潔さ】 2014/10/22



フィリップ・シーモア・ホフマンらしい遺作と言えるのかもしれない。
原作ル・カレ、監督アントン・コービンとは渋いね。
そしてどこか、時代を読もうとしない彼の潔さがスクリーンから滲み出ていた。

かって、「カポーティ」での知性、
「その土曜日時58分」での愚性には心底驚かされた。
本シネマで見えてきたのは、自然体だった。
それは、どこか諦めにも通じる自暴自棄の自然体だった。
シネマであることすら意識しないような自然な演技は際立っていた。

演じたのは、ドイツのテロ対策諜報機関のチーフ。
非合法組織であるらしく、常に警察権力と衝突している主人公。
もはや、ドイツには、いやEUには戦うべきスパイはいないというのに、
地道にイスラムテロの動向を監視する主人公。
寒い国が消滅して20年以上が経つというのに、高度なエスピオナージュに執着する主人公。

今 諜報戦争はパワーの時代になっているというのに、
テロリストらしきものは、強制的にグアンタナモに送られているというのに、
CIAは今更ながら、非合法活動に邁進しているというのに。

不器用な人間は世間に一杯溢れている。
もっと、もっとフィリップ・シーモアに、
そんな愛すべき人間を演じてほしかった。

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