人生に乾杯! (2007)

文字数 608文字

【ハードボイルド ナウ】 2010/4/24



50年連れ添った夫婦には怖いものはなかったみたいだ。
とんでもないハードボイルドなストーリーに、老人の心意気にちょっぴり涙した。
そこに僕の近い将来を、不安をそして恐怖を見て取ったから。

仕事をやめ、働くこともかなわず、国家に頼ることもできず、
それでも生きるため《お金》というルールに押し拉げられる晩年にどう抵抗するか?
残念なことに、恐ろしいことに
このシネマは遠い東欧の国のお話とも思えない現実感で僕に迫ってきた。

主人公老夫婦はソビエト介入のあったハンガリー動乱期に奇妙なきっかけで結ばれた。
夫は長年秘密警察のドライバー、妻は由緒正しきお家出身。
若き日の困難を乗り越えて、老後二人は幸せに暮らしましたとさ
・・・めでたし となるところだった。

ところが今世の中はそう単純ではない。
公平ですらない。
国家イデオロギーの違いに関わらず老人が破綻する社会は住みよい国であるはずはない。
愛するものを護るため銃を手にし《お金》を強奪する二人。
失われた希望をもう一度取り戻そうとするかのような逃避行だ。
ファンタジーでもコメディなんかでもない、
やはりこれはハードボイルドだった。

老夫婦の対極として二人を追う、これまた夫婦の刑事。
老夫婦の希望はしっかりと若き次の世代に引き継がれていった。
なかなか上手な対比だった。

ハリウッドがリメイクするならば、
クリント(イーストウッド)がご主人役だろうな、きっと。

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