ジュリエッタ (2016)

文字数 546文字

【フォーカス曖昧な女の一生】 2016/11/9



アルモドバル監督らしくない穏やかな起伏の少ない物語に戸惑い、少しがっかりした。
とはいえ退屈なお話ではないことは間違いないが、今までの癖のある特殊性は影を潜めている。

主人公ジュリエッタの20歳代から60歳くらいまでの半生を、二人の女優さんが演じ繋いでいく。
シネマのテーマは、一度失った娘を取り戻すこと。
娘は父(ジュリエッタの夫)の死をきっかけに母への不信感と自らの贖罪意識から母のもとから消え去る。

シネマは、夫との巡り合い、娘との軋轢と別れ、新しい恋人との出会い・・・淡々とジュリエッタの個人史をなぞっていく。
ジュリエッタの姿はスクリーンいっぱいにその存在感を伝えてくる(彼女のファッションコレクションも興味深かった)。
だが、その生きてきた道は決して特殊なものでも、華やかなものでもなかった。
ジュリエッタの人生は、僕ら庶民の毎日と何ら変わることない退屈の連続だった。
少しだけの悲劇が娘を失うことになったが、人生はどこかで修復されるものだ。

シネマが見せてくれるのは、老いの環境を前に小さなな幸せを望むジュリエッタを、力づけちょっとだけ後押しするところまで。

そう、人生には何が起きるかわからないものよ。
人はみんな、そう期待して毎日目覚めて立ち上がる。
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