ボーはおそれている (2023)

文字数 688文字

【全てはナイトメア 】2024/2/16


ホアキン・フェニックス主演なので拝見した。
巷間話題のアリ・アスター作品はこれがお初だったが、噂通りの鬼才だ。

それ以上、配給・製作がA24ということが衝撃だった。
快進撃のつづくA24,出合うたびに過去に経験したことのないシネマ体験を約束してくれることは間違いない、本作もスリラーの定義を根底から覆す。

まずもって、確固たるストーリーがあるようでない。
ダメ男が母親の死亡に動揺して右往左往するなか、摩訶不思議な連中と出会い、奇妙な体験をし、結局葬儀には遅れるものの実家にたどり着いてみれば驚愕の恐怖が待ち構えていた・・・・という説明できない構成・結末になっている。
  
あまりの脈絡のなさに、これはコメディだと片付けてしまうこともできるだろう。

しかし、ぼくは本シネマのような物語を知っている、正確に言えば知っているような気がする。
それは毎夜、夢の中で彷徨う悪夢とよく似ていた。
論理的な説明はできないのに、身近な人々が登場し、倫理にもとるような行動をし、それでいて誰も罰せられることもない。
悪夢なのだから、目が覚めるとさっさと忘れてしまえばいいものを、その日一日が鬱陶しいものになり、結構へこむことがある。

そう考えてみると、治安の悪い悪の巣窟のような主人公のアパート、彼を助ける怪しさ芬々のドクター夫婦と娘、森のジプシーたちの薄命、そして、クライマックスの神曲紛いの最後の審判などは、悪夢そのもの以外にあり得ないことだ。

日常的な悪夢をホアキンに延々と語らせるだけのシネマ、その決断こそがA24の功績なのだった。
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