後妻業の女 (2016)

文字数 677文字

【バケモノ 大竹しのぶ】 2016/9/4



シネマの中で「あの女はバケモノ」と言われる。
それは天才的犯罪者としての褒め言葉なのだが、
女優大竹しのぶを表現するに実にふさわしい言葉だと思う。

「事件(1978年)」で可憐でありながら強い意思を持った少女を演じてから40年近く、
そのバケモノぶりは変わることがない。
本シネマでは、財産を目的とした後妻婚活中の淑やかな女性と、
金銭に執着する本能一筋の猛女との格差が笑いを誘ってくれる。
こんな笑いがなければ、本作品はきっと後味も前味も、
そして中味さえも苦いものになるようなテーマを扱っている。

高齢(それも後期)のお金持、持病持ちならなお好都合というターゲットと結婚して
財産をかすめ取るのが主人公の生業だ。
今作でも描かれているように、どう考えても社会道徳的に忌避すべき行動であり、
ましてや遺族にとっては悔しい思いばかりの仕打ちだ。
ただし、この財産はボケ老人個人のものであり、
遺族のものではないことをシネマでは最後に諭してくれる。

そうなんだ、
老人にとっては、楽しいことを提供してくれ、
沢山時間を一緒に過ごしてくれる相手が一番好きなんだ。
大家族制度がほぼ完ぺきに崩壊してしまった日本で、
このような老人対象のビジネス、犯罪は起きるべくして発生したのだろう。

本シネマでは主人公が10度目の後妻を目指す宣言で終了する。
残念ながら、人が長寿になるほどに、このビジネスは発展し続けていくことだろう。

日本社会が抱える真っ暗な将来を、
これほどまでに憎たらしく、可愛らしく教えてくれる大竹しのぶさん。
貴方はバケモノ以外の何ものでもありません。

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