ゴスフォード・パーク (2001)

文字数 862文字

【「したたかさ」と「哀しさ」】 2007/8/30



古き良き、そして醜い英国に触れることができた。

大金持ち貴族(金持ちで貴族になったタイプ)の狩猟会に集う一族とゲストがアップステア組。
そのお世話をする執事、女中、料理人、下男ら使用人たちがダウンステア組。
文字通り絢爛豪華な「お屋敷階上」と、「暗くて狭い地階」の対照的な図式にまずは魅了される。この対称的グループのリアルライフを描くなかで、殺人事件をも推理させようという試みのシネマだ。

リアルライフ・・・なんてのはこんなものだろう。

1930年代の貴族のお館に渦巻くリアルライフなんて当然知るすべも無いけど、人間はそうそう変わらない。
僕がリアルだと感じ入ったのは、二つのグループ、人数にして30名以上の登場人物のことが最初はよくわからないからだ。
実生活だって、少なくとも僕は、仕事仲間、地域住民、趣味友達のことを良く知っているわけではない。詳しく知る必要も無いし、知ることの負担も想像できる。

シネマだから、推理作品だから、群像劇だからといって、とってつけたような怪しげな人物紹介が無いのがうれしい。確かにいくぶんストレスを感じるが、そこはアルトマン監督のこと、きっちりと謎解きまで導いてくれる。
あとは大勢の名俳優たちの演技に身を任せるといいだろう。
実際、シネマ終了時にはあれほど多数の登場人物がいちいち身近に感じられるようになっているから驚きだ。

なんといっても観どころは、ダウンステア組の「したたかさ」と「哀しさ」だった。
スノッブなご主人に健気に仕える使用人たち。
「優れた使用人はご主人が望むことを察知して先に用意すること」
・・・実はこれ、事件のキーワード、哀しい。
彼らは、泣き声さえ押し殺し、ウィスキーに逃れ、小賢しい仕返しに心のやり場を求める。
このような下層階級の下支えがあっての大英帝国だったんだろうな。

歴史の皮肉とはいえ、いま大英帝国の末裔たちが人種、宗教、国境さえ超えた平等に苦心している。
この局面を乗り切るのもやはりダウンステア組の結集だろう。
ジョンブル魂健在なりや?
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