キングスマン:ファースト・エージェント (2020) 

文字数 844文字

【心機一転 キングスマン】 2022/01/04



英国のユーモアとアイロニーに溢れていて大好きだったキングスマンシリーズが変わった。
これまでの2作は、英国でしか生息しないだろうと思っている「スパイ」という伝統芸術をテーマにしながらも、物語・映像共に常識の枠をぶっ飛ぶ展開に心を酔わせたものだった。
2作目が「初めの終わり」というメッセージがあったように覚えている。
そして3作目は、キングスマンの創設物語りになっている。
今作が「初め(ビギニング)」であるとすれば、これはもう「初めの初め」に違いない。
オリジナルタイトルTHE KING’S MANがその意気込みを物語っている。
余計なサブタイトル付きの邦題はいつものように蛇足になっていた。

さて、キングスマンの成り立ちとは何か? 今シネマの大きなテーマだ。
そこにあったのは父と息子の絆であり、家族の誓いだった。
舞台は第一次世界大戦下の英・独・露の混沌の極みの政治、いつの時代も祖国のために命を投げ出すのは若者、数多の若い命を政治が救えないとしたら、僕たちはどうればいいのか?
歴史上の重要人物が遠慮なくストーリーに多数投入される、英国王、独皇帝、露皇帝、ラスプーチン、マタ・ハリ、レーニン、ヒトラーまで!
マシュー・ヴォーン監督の手法は過去2作と変わることなく華麗で強烈、特にフレッシュな映像の連続は、キングスマン・ファンを決して失望させなかった。
平和主義者の父を演じるレイフ・ファインズ、熱血漢息子を演じるハリス・ディキンソン、二人の新旧のハンサムスターも見所だ。

皮肉な見方をすれば、ネタ切れのため遥か昔のビギニングに戻って、当分の間諜報活動ネタには困らなくなった…ともいえるが、今の世の中が、平和過ぎて正義対邪悪の構造が現実感を伴わなくなったのかもしれない。
しかし、本当の危機は決して人類の英知の及ぶところでないことは、今回のコロナパンデミックで明らかになったはずだ。
僕にできるのは、キングスマンの次回作を心待ちにすることくらいだ、
いやホントに。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み