アイガー・サンクション (1975)

文字数 1,207文字

スタイリッシュと愚直 2007/2/1



あまりにも通俗的過ぎる「カッコイー」の言葉を本シネマには捧げたい。
クリントがカッコイー。
スタイリッシュとさえ言ってもいいかな。
彼本来のキャラクターと少し違ってるような気もするが、
僕はこんなお洒落でタフなクリントも好ましい。

クリントは元諜報員、それも殺しのライセンスを持ったスパイ
・・・とくればジェームスボンドを意識しないわけはなかったろうと推察する。
製作された1975年はボンド役がロジャー・ムーアに移って、
2作目「黄金銃を持った男」が公開された後。
スパイ物語の革新が話題に上がっていたのだろうか?
クリントが目指したスパイとは?
クリントは当然のごとく、肉体を使ったスパイを演じるのだが
(21世紀昨今のボンドの変身ぶりを見ると、クリントは30年先行してた)、
このスパイも引退し、今はツイードのジャケットが似合う大学教授。
女子学生から秋波を送られる人気者、
もっとも単位との交換だったりして本人にはかわいそうだったけど。
この教授、自分の為だけの名画コレクションを隠し持ち、
国際的クライマーの経歴を持つっている。
どうです、間違いなく「カッコイー」でしょう?

シネマの骨子は、引退の身なのに無理やり殺しの現場に引き戻される。
その制裁(サンクション)の舞台がアイガー北壁、
それも登山中に任務遂行するというミッション・・・・・??
このプロットそしてお約束の犯人探しとなる結末は切れ味鈍く、
まったく現実感、必然性を欠くものだと承知するものではある。

しかしながら一方で、ヨセミテ(訓練)とアイガー北壁における
登山シーンは圧倒的な見所として、この不具合を補って余りあるものになっている。
僕は登山に関する知識は皆無だが、身体が知らずに映像に反応し感銘してしまっていた;
■ ヨセミテの森の緑と渓谷の清らかさ
■ 砂漠の石柱頂上の大俯瞰ショット
■ アイガーに切り裂かれた真っ青な空
■ アイガー北壁にしがみつくクライマーたち、色鮮やかなアノラックの大望遠ショット
■ 雪に変わるアイガー魔の白い顔
ラスト、舞台がアイガーに移ったとき、
今までのスパイごっこはなんだったのか?
という疑問すら頭には浮かばず、ひたすら画面に釘付けされていた。

これはひとえに、スタントなしで北壁登山に挑戦したクリントの愚直さ、
ひたむきなガッツが観る側に感動として伝わったからに違いない。
シネマ史上に残る「数々の名登山シーン」の先陣を切った歴史的な「カッコイー」であった。

ところで、本シネマで「カッコワリー」のが
スーパースパイのくせに「女性に甘いところ」。
自らスパイのニュービジョンを創り、演じながら、
なぜ女性に甘いキャラクターを付け加えたのだろうか? 
なにせ、ベッドに忍び込んでくる美女にころりと騙されることしきり。
これをクリントの正夢とみるか、逆夢ととるか??

さすが、ボンドと違ってマタハリに脇が甘い、
女性にもてすぎるクリントならでは。
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