異動辞令は音楽隊! (2022)

文字数 885文字

【強引と華麗】 2022/8/26


予告編情報からは、阿部寛さんお得意の「何にでも変身シネマ」だと受け取った。強引でかつ華麗な展開なのかとも予測していた。
軍曹とあだ名される鬼警部補が部下からのモラハラ告発で音楽隊に左遷させられ、さあどうする・・・という物語の流れはいささかも予想に違わず、変身ハッピーエンドまで目一杯堪能させて頂いた。

シネマのいたるところに現代日本に蠢くアイロニーが設定せれている、それらを対比することで一層そのインパクトを増幅していた。
例えば主人公は仕事優先でQLなど眼中になかった元刑事打楽器担当音楽隊員、離婚して娘からも疎ましがられている。
同僚女性トランペット隊員は子供を抱えて離婚協議中の仕事熱心な交通警官、子育てと音楽との両立に悩んでいる。
主人公の母親は夫の死や息子の離婚をまるで理解できない認知症だが、介護されている様子もない。
音楽隊を応援するファンはじめ複数の何の罪もない高齢女性がアポ強盗の標的となる、警察は成す術もない。
コンプライアンス重視する一方捜査成果が上がらない警察組織、予算不足、人員不足を理由に音楽隊を廃止しようとする官僚。
仕事改革の形骸化、高齢者犯罪被害の拡大、認知症介護問題、片親支援対策、硬直化した組織などなど身近な課題が投げかけられる。

まるで現代日本の縮図のような閉塞感が本編を覆いつくそうとする中、主人公が音楽を通して仲間との調和を図り、自らの過ちを自覚し新天地音楽隊で新しい才能を伸ばしていく。
組織に潜む問題点を明らかにしながら、一人一人の熱意と才能で問題を解決し、心温まる大団円に持ち込む脚本の流れ、 シネマの心地良い流れに身を任せる安心感と満足感は久々かもしれない。

むろん、変形とはいえポリスストーリーである、捜査活動も並行して展開されるが、それはおまけのように思えた。

さて、阿部寛さん起用ならではの主人公設定、鬼刑事からドラマーへの変身は、やはりどう見ても強引だったし、昔気質の刑事がジャズセッションで自己を解放していくサクセスは絵に描いたように華麗だった。

かくして強引と華麗の見事なマッチング・シネマだった。
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