カード・カウンター (2021)

文字数 711文字

【すべては老いのなせる業】 2023/7/25


ポール・シュレイダー監督・脚本という懐かしい響きに誘われてつい拝見してしまったが、彼の監督作品にこれと言った良い記憶がないのを観た後で思い出す、我が身の老化である。
老化と言えば ポール・シュレイダーも76歳、今作で製作総指揮のクレジットがあるマーティン・スコセッシは80歳、なんとも昔の名前ばかりが表に出ていたが、お互いの老化をひしひしと感じながら拝見したシネマだった。

シュレイダーと言えば「タクシー・ドライバー(1976)」の脚本、そして監督はスコセッシだった・・・いい意味でのトラウマとなっている。
主役に曲者オスカー・アイザックを迎えて、タクシー・ドライバーコンビが繰り出したのはアメリカ軍の恥部である捕虜虐待・拷問事件。
ぼくはと言えば 洒落たカード使い物語を想定していたのだから、このギャップは大きかった。

捕虜虐待で長期間刑に服した主人公、罪を逃れて軍事民間会社に収まっている元上官、そして主人公の部下の息子の悲劇。
捕虜への拷問・虐待には当事者の素質が肝要だと常々信じる立場だが、本シネマでは主人公がその素質故に壊れてしまったこと、 部下の家族を救うことが彼自身の救いになるということ、そのために敢えてポーカーゲームに参加するといった筋立てになっている。
ということで、ピリピリとしたカードゲームシネマではなかった。

と言って、捕虜虐待の告発も中途半端だったし、戦争後遺症ともいえるSM対決に至っては音声だけの表現は不親切。
さらに エンディングの真の愛のメタファーも不可解である以前に陳腐だった。
すべては 「老化」のなせる業、老害と言ってもいいかもしれない。
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