モヒカン故郷に帰る (2015)          

文字数 496文字

【怪演たっぷりでしたね、アキラ先輩】 2016/4/9



食えないヘビメタバンドマンの主人公が恋人と故郷に帰ったら父は末期癌、
さあ どうする?
今どき素直な、ひねりもない物語が延々、淡々と続く。
故郷は離島で過疎が進んでいる。
これまた今どき、日本のいたるところにある風景と日常だった。

主体性のない長男を演じる松田龍平さん、頭の悪い恋人を演じる前田敦子さん、
ご両人とも物語にしっくりとは溶け込んでいなかった。
そこで異才を放ってしまったのが父親役の榎本明さんだった。
ホンが平坦だし、演技陣も平凡だったので意気に感じたかどうか知らないが、
久々の「やり放題」を拝見した。
榎本さんの怪演を懐かしく思う一方、
彼の予期しないリアリズムにふと目を背けることがあった。
末期がん患者の自宅での看取り問題を扱う本シネマを
コメディタッチにしたい気持ちは想像できる。
しかし、俳優陣の間隙をついて榎本さんは超リアルな末期がん患者になっていく。

癌死は真直ぐに突き進むものでなく、患者は肉体とともに精神も侵されていく。
その現実があまりにも緻密に再現されていた、観ていてつらく目を背けた。

榎本さんの怪演、実はシリアスすぎる怪演だった。

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