荒野はつらいよ ~アリゾナより愛をこめて~ (2014) 

文字数 747文字

【荒野はつらいよ ~アリゾナより愛をこめて~ (2014)】 2014/10/11



予告編で、しっかりTEDを利用して監督が「ヒットするかな?」と、
TEDが「そんなこと知るかっ」と答えるところは
自虐ギャグなのだが、今観終わってみて、ぜひヒットしてほしいと願っている。

おふざけ、下品な表現、発言は山盛りされているが、
主人公の真面目なオタク具合がそれを相殺している。
真面目オタクが台詞となってポンポンと出てくるところがいかにも説教臭いのだが、
バカバカしい映像に雑妙に調和するのが本シネマの真情なのだろう。
エスニックギャグで東洋系、アフリカ系、先住民をいじっているのだが、
根底には謝罪を込めた畏れすら感じ取れる。
イスラム教も、ユダヤ教も、キリスト教も全部まとめて茶化した結果、
その危険性を取り去ってみせる。
監督、脚本、主演のセス・マクファーレンの
リベラルなコンセプトがしっかりと伝わり小気味がいいくらいだった。

そんなハイレベルジョークシネマを、古色蒼然とした、
しかし正当な西部劇設定で製作しているのが面白い。
タイトルは金色に赤縁取りの文字が画面センターに並んでいく、
これはジョン・フォードの世界。
音楽はアルフレッド・ニューマンの再現のような希望に満ちた響き。
なによりも、西部劇らしい厳しい荒野、美しい草原、和みの川辺が
恥ずかしげもなくスクリーン一杯に。

セス・マクファーレンっていったい何者?
シネマでリベラルを訴え、
シャーリーズ・セロン、アマンダ・セイフライドの特級女優をはべらせ、
今を時めく不死身のリーアム・ニーソンを撃破し、
信じがたいゲストスターをチョイ役で使い、
最後に、さわやかな心持にさせてくれる。

上映拠点が少ないので、
TEDの言うように「ヒットするかどうか?そんなこと知るか」
もったいないなぁ。

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