太陽 (2005)

文字数 651文字

【不敬罪は大丈夫ですか?】 2007/4/28



僕は落ち着いて観ていられなかった。
「不敬罪」という言葉が頭にちらついた。

戦後生まれとはいえ、僕の教育者たちは紛れもなく戦前派の人たちだった。
彼らは、天皇裕仁を揶揄するそぶりまではみせても、心では畏れていたことを、子供ならではの直感で察知していた。
この観点(天皇の実態)から本シネマを論ずると、「天皇のプライバシーを推察する・・・云々」では済まされない想いがよぎる。
カポーティを人格面で掘り下げるシネマとはわけが違う・・・・と思ってしまう自分がこの作品に対峙していた。
いかに、教育の力が恐ろしいものかを実感する。

だだし、僕は現人神(あらひとがみ)時代を知らずに、人間天皇プロジェクトとして天皇制過渡期を生きてきた世代だ。だから、本作品のエッセンスが事実だと信じない一方、まったくのフィクションだとも信じることが出来ない。
心配なのは、無垢なシネマファンがどちらか片方に足をつけて、バイアスがかった見解を持ってしまうことだ。
実はそのくらい、面白いシネマだから。

「イッセー・尾形の一人芝居 THE MOVIE」 とタイトルをつけると誤解なしで楽しめるかもしれない。
桃井かおり、佐野史郎たちはこの一人芝居の小道具だ。
とはいえ、
皇室という残された日本のタブー領域にちょっかいを出したスタッフ、キャストに、ここは大拍手。
それにしても、戦後60年を費やしてもこの皇室という暗闇はいまだ国民には不可解なままだ。

風穴が開くとは思えないが、このシネマの意義はまさにこの点にある。
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