グランド・ブダペスト・ホテル (2013) 

文字数 494文字

【癖のある美味さ】 2014/6/7



トーキーシネマの趣にあふれた愉しい作品だった。
このところシネマ日照りにイライラしていた身には、
その分だけ爽快感も割増だったかもしれない。

今どき珍しい狭い画面、強烈なカラーコントラストが眩しいかと思えばセピア調、
石器時代のようなSFXもありの乱調律が緊張感を高めてくれる?
章立てのテロップが手書きだったり、詩がスーパーインポーズされたりの
クラシック調も途中からはお楽しみになってしまった。
お話は、コンシェルジェの鑑のような男とその弟子の波乱万丈であり、
二重回想の形式をとってファンタジー色を強調しているが、
大物侯爵夫人が人生の最後に愛したのが主人公のコンシェルジェ、
その遺言をめぐってのサスペンス仕立てになってはいるが、
シネマの中で異様にリアルだったのが戦争への嫌悪、
具体的にはナチらしき集団への蔑みだった。

その分かえって真実性が湧き出てくるという凝った構成でもある。
能天気なコンシェルジェ物語と見せかけて、人生の不合理を説いてくれる。

といっても、堅難しいシネマではない。
ちょっと癖があるシネマだが、
癖のあるものほど美味いものが多いのも人生というものだ。
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