あなたになら言える秘密のこと (2005)

文字数 687文字

【この秘密、墓の中まで持っていく】 2007/9/6



こんな怖い言い回しがある:
「この秘密、墓の中まで持っていく」、
表現はさまざまだけど、
人には決して知られたくない秘密があるものだ。
若干インパクトに強弱はあるけど、
主人公ふたりの秘密もその類だ。

我が身として捉えたら、これは墓場行きクラスの秘密だ、間違いなく。
男(ティム・ロビンス)は、親友の死に責任がある。
女(サラ・ポーリー)は、クロアチア民族戦争の犠牲者。
二人に共通するのは、生き残った罪悪感、
理屈の通らない深い喪失感だった。
男は火傷で重症、角膜も負傷して眼が見えないまま、女の看護を受けることになる。
男が伏しているベッドは、陸上遥か遠い、海の上の巨大デッキ。
この海上プラントに巣食う男たちも異様だ、彼らのことも墓場に持って行きたいくらい。
みんな孤独、人とのつながりが苦痛な男たちばかり、なにやら秘密の香りもしていた。
多かれ少なかれ、人は孤独なものとすれば、この海上の棲家が居心地が良い者もいるのだろう。

ここで環境条件は全て揃う。
男と女が墓にまで持って行こうとした秘密を語り始める条件が。
重症の眼が見えない男に、ふと憐憫と甘えを覚える女、
自分の罪を未知の女だから安心して懺悔したい男、
周りにたたずむのは、無関心を装う優しい孤独者たち、
そして、全てを包む海の上。
全編、男と女の会話だけでストーリーは息づく。

「感じる贅沢」を味わえたのもサラとティムのおかげ、感謝。
「人間は孤独だ」と誰もがしたり顔で説法する。
僕は、だから人間は愛することを諦めてはいけないと理解している。
孤独の絶望のふちから這い上がるには大きな無償の愛しかない。
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