ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 (2012)

文字数 874文字

【リチャード・パーカーの魂に幸あれ】 2013/1/27



さすがブッカー賞原作なのでしょう、プロットが素晴らしかった。
残念ながらも原作未読ですが、
この内容だとすればアン・リー監督の功績こそ讃えるべきでしょう。
文字であれば叙述的トリックでいかようにも装飾を施すことはできるのですが、
本プロットを映像化する場合、動物キャスティング、演技指導に戸惑ってしまうところです。
幸いにも、今では「CG」、「SFX」、「VFX」を駆使できる環境になったことを感謝すべきなのでしょう。

オープニングロールの動物園のシーンからこれら特殊効果の匂い紛々の前兆は感じていました。
インド風味なのか?・・・と訝っていたのが間違いだったようです。
もともと本作品はピュアーな《ファンタジー》だったことに最後まで気づきませんでした。
その面から考察すると、事前のプロモーション(予告編、TVCMなど)は
見事に僕の錯覚を射止めたようです。
僕も人類の歴史の中で「虎」をペットにした事実は無いことを、
敢えて無視していたのかもしれません。
そのくらい「虎と少年の友情」は心地よいファンタジーでした。

このファンタジーの詳細内容に触れるのは
本作のエッセンスを事前に暴露することになるので遠慮しますが、
番宣が執拗に強調していた「少年はなぜ227日間生き延びれたのか?」は、
ある種の詐欺かもしれませんね。
あまりにも非日常的シチュエイションは信じるしかない場合もあります、
まして実話に基づいた物語であれば。

当たり障り無い言い方をすれば、
現実の悲劇を「なにか」に置き換えていかなければ
「少年は生き延びることは叶わなかった」ということになるのでしょうか。
なるほど、人人間にはこのような強靭な精神活動が可能であることを知ることにもなりました。

観終わってみれば、親切な劇中「ネタバレシーン」のおかげもあって、
番宣のトリックにも腹が立たず、
映像美が余計に記憶に残り、生きる勇気もちょっぴり増したようでした。
生き抜くことはたやすいことではないけど、
諦めることなどは考えることもなし
・・・リチャード・パーカーの魂にかけて。

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