イルマーレ (2001)

文字数 688文字

【モルトベーネ】 2008/7/27



モルトベーネ!
執拗にお勧めいただいたアジアシネマの達人に再び感謝(インファナル・アフェアもそうだった)。
このシネマ、タイトルからも窺えるようにイタリアへのオマージュに満ち溢れている。
僕が韓国シネマで戸惑うことの多い、あの熱波が影を潜めている。
そこにあったのは、ファンタジーの形を借りた、穏やかだが深い人間の愛の形だった。
イタリア・ネオリアリスモを角度の違う切り口で踏襲し、人が生きることの意味を考えさせてくれた。
その一方では、絵画のごとく計算された風景の美にたたずむ、ポストモダン建築の「イル・マーレ」。この建築物どう見てもイタリアンデザインだろう。

メインテーマの男女の切ない愛を、さりげないながらきっちりと支えていたのは、
父の、友達の、同僚の素直な感情、それは悲しみであり慈しみであり信服だった。
シネマのコアであるパラレルワールドのきっかけが、父息子の愛憎に由来させたのも納得できた。
シネマ途中で「僕だったらさっさとこうするのに」と歯噛みした解決策が、ラストに現れてまた納得。
これらは実にアジア的な精神から導き出されるストーリー展開だった。
決して、奪い合うことなく、超えることなく、裏切ることもない信頼の人間関係を前提にしていた。
このシネマ、モルトベーネと断言する。

老婆心:
このようなアジアシネマ名作とコピー版との比較は意味がない。
観る側の拠って立つ精神基盤が異なると、創る側にもそれなりの覚悟が必要だ。
ただただ資金を動員して無知で馬鹿げたコピー作品に変換しているわけでもない。
観客を消費者として尊重しているだけなのだろう、ハリウッドは。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み