チャイナ・シンドローム (1979)

文字数 754文字

【一級の社会派娯楽シネマ】1979/10/3



考えさせられるテーマである。
とくに僕ら日本人特有の弱いとこを指摘され、複雑な思いが消えない。
そういうと、題材が原子力発電所事故だけに、
地味な堅苦しい社会派作品と受け取られてしまいそうだが、
シネマの楽しさから言えば一級の娯楽作品でもある。

何より、ストーリー展開のスピードが現代人の呼吸にぴったり合っている。
主人公がテレビ局のスタッフという設定が、展開スピードを倍速している気もする。
ジェーン・フォンダは《ネットワーク》のフェイ・ダナウェイ以上に
現実感溢れるテレビ人を演じ,原発事故を決して絵空事にさせなかった。

何より、石油の代替エネルギー論争の現状のなか、
一方で大きな勢力となっている核アレルギー世論が、
テーマ、内容をいっそう切実なものにしたのは事実である。

シネマとは観客ひとりひとりが独立した立場で
映像を受け止めることができる娯楽である(基本)。
シネマは観客個人の好み、不安、体験を刺激し、
受け手たる観客を楽しませ、悲しませ、感動させる(これも基本)。
とすれば本シネマは原子力エネルギーに寄せる多くの現代人の
錯綜した願いを代弁してくれたような気がする。
本シネマが一級の娯楽作品であるゆえんだ。

ところで、
このシネマを観て、単純に原子力発電の危険性を憂うだけでは
人類の発展は望むべくもないだろう。
人類が代替エネルギーを獲得するには長い時間がかかるかもしれない、
もしかしたら手に入れることができないかもしれない。
大切なのは、後継者に害を及ぼすエネルギーは避けなければ、
拒否しなければいけないということ。
僕らが、そして先祖が抱いてきた「人類の見果てぬ夢」を
達成してくれる可能性は彼ら後継者だけなのだから。

「国が安全だ」というから信じるしかない哀れにも無力な国民に幸多かれ。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み