ビッグ・アメリカン (1976)

文字数 658文字

【200歳の健康】 1977/12/1



「BUFFALO BILL AND THE INDIANS, OR SITTING BULL'S HISTORY LESSON」
原題がTVドラマ風である、もうそこにロバート・アルトマン監督のアイロニーが炸裂していた。
ワイルド・ウェスト・ショーで有名なバッファロービル、カスター将軍騎兵隊を全滅させたシッティング・ブル酋長の二題お噺…とでもいうのか?

建国200年記念として製作されたという由来、ポール・ニューマン主演、ベルリン映画祭グランプリ などの豪華なプレミアム付きだが、日本での評判はあまり芳しくなかったのが不思議だった。
シネマ前半で、その理由が分かった。
本作の舞台は日本ではなじみの薄い、だから人気も低いショー・ビジネスの世界だった。
そこに先住民インディアン問題を絡めたものだから、適切に受け止め評価できるシネマファンは日本では、いやアメリカ以外ではきっと少なかったに違いない。

かと言って、アルトマンは先住民問題を真正面から取り上げるわけでもなく、政治イシュー提起しているわけでもなかった。
インディアンの地にアメリカを建国したWASPには、シッティング・ブルの心情など理解できるわけもないと皮肉り、突き放す。

200年の歩みの中でアメリカが創り出したショー・ビジネス、その中でしか生き残れないインディアンたち。
建国200年記念としてこれほど皮肉なシネマはないだろう。
そして、そんな作品を世に問うアメリカの健康状態がある意味羨ましかった。
(記:1977年12月1日)
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